閃光のように 第7話 |
ルルーシュは泣きだした! スザクも泣きだした! 慌てたルルーシュはスザクを慰めた! そしたらセクハラされた! ルルーシュは助けを呼んだ! C.C.が現れた! C.C.の攻撃! 会心の一撃! スザクは頭をビール瓶で殴られ気を失った! ルルーシュはショックから再び泣き出した! 「・・・ひどいよ。何もビール瓶で殴らなくても・・・」 一瞬だけ意識を飛ばしたスザクは、殴られた場所をさすりながら起き上った。 どうやらダメージは全くないらしい。 あー痛かったと平然とした顔で言った。 ちなみにルルーシュは速攻でC.C.が確保している。 再び泣き始めたルルーシュをよしよしと慰めながら乱れた衣服を整えた後、ぎろりとスザクを見た。 私のものによくもまあ図々しく触れたものだ。 少し面白い奴だと思ったが、この男は敵だ。 C.C.はそう判断した。 「しかもこの瓶、中身入ってるし・・・」 痛いはずだよね。 殺す気? 僕じゃなきゃ危なかったよ? 未開封のビール瓶を拾い上げ、再び殴られたら堪らないと壁に 叩きつけて割っておく。武器を処分されてしまったことにC.C.は腹立たしげにスザクを睨んだ。 「痛いですますのか、このくるくるうざくが」 もちろん殺す気で振りおろしたさ。 「ちょ、変な名前で呼ばないでよ!僕は枢木スザク!覚えてよね」 それとも、記憶力悪いのかな? ルルーシュを取られたことに苛立っているのか、スザクもぎろりとC.C.を睨みつけた。 スザクもまたC.C.を敵と認識したようだった。 互いにルルーシュは俺の嫁!という態度を崩さず暫くにらみ合いを続けていたのだが、C.C.を見るぐらいならルルーシュを鑑賞した方が建設的だと判断したスザクは、視線をルルーシュに移した。 しくしくと泣き続けるルルーシュの姿に自然と眉尻が下がる。 またやり過ぎてしまったらしい。 理由は解らないが今のルルーシュは酷く傷つきやすいようだった。 泣き顔もいいけど、やっぱり笑顔のほうがずっといい。 もう少し自分を抑えて行動しようと、とりあえず反省した。 我慢できるかは別の話だが。 「で、ルルーシュ説明してくれるかな?君、さっきまで女の子だったよね?そのインナーの下、さらし巻いてるみたいだし」 でも今はまちがいなく男の子。 そこに疑う要素は欠片もない。 念のため触って確かめたし。 スザクは立ち上ると、ルルーシュの傍まで近づいた。 警戒するC.C.は存在ごと無視し、に縋りついて泣いているルルーシュに声をかける。 「ルルーシュ、ルルーシュ、ちょっとこっち見て?」 そう言いながらスザクがルルーシュに手を伸ばすのでC.C.はピシリと払いのけたが、それで引き下がる男じゃない。 再び手を伸ばし、叩き落とされる前にC.C.の手を掴む。 そしてもう片方の手で、邪魔されることなくルルーシュの頬に触れた。 C.C.の胸に顔をうずめる形で泣いていたルルーシュは、スザクの手に気付き、その顔を少し上げスザクを見た。 うるうると涙を湛えるその様子にくらりと来たが、これ以上は本当に嫌われかねないと、どうにか平常心を保ちながらじっとその瞳を見た。 左目。 今は綺麗な紫色だが、先ほどはまちがいなく赤かった。 「左目が赤かったのも関係しているのかな?教えてくれるよねルルーシュ?」 スザクはにっこりと邪気のない笑みを浮かべ、ルルーシュの髪を梳きながら尋ねた。 「ぐす、ぐす。スザクは俺と共に来て、一緒にブリタニアをぶっ壊してくれるか?」 その言葉で「私と共に来い」はプロポーズではなく「一緒にテロリストやろうぜ!」という誘いだという事にようやく気がついた。というか此処まで泣かれたら気付かない方がおかしいか。 ルルーシュに告白されたと思ったのに・・・。 でも、これでプロポーズは僕から出来るって事だよね? 一瞬落胆したスザクではあったが、あっさりと立ち直ると「もちろんだよ。君の事は僕が守るからね、ルルーシュ」と、了承を示した。 なにせルルーシュが無事だったのだ。 過去の罪を償うためにも死に場所を求めていたスザクではあったが、こんなに可愛いルルーシュを残して死ぬという事は、誰かにルルーシュを取られるという事だ。 特にこのC.C.とかC.C.とかに間違いなく奪われる。 それは容認できない。 人はいずれ死ぬ。 その時が来るまでルルーシュと共に生きる。 そのためには、父親殺しの贖罪の気持ちと、そのせいで日本が負けたのだという負い目はこの際きれいさっぱり忘れることにした。 ルルーシュと二人で出来ないことなどあるはずがない。 という事は彼の手を取れば日本を取り戻せるのだ。 それで日本人に対する負い目はチャラになるし、父親はよく考えれば10歳にもならない幼女を嫁にしようとした変態野郎だ。 ルルーシュとどんな取引をしたかは知らないが、もしかしたら代わりにルルーシュを嫁にしようとしていたのかもしれない。それは許せない。 自分の妻を守るため仕方なかったんだと考えを改め、後悔するのは止めた。 なにせ仮面の男からのプロポーズに嬉しさを感じたのは、ルルーシュに告白されたような高揚感を感じたからだし、まあ、実際それは正しかったわけだけど、あの仮面を着けていてもルルーシュだと判別できたという事は、やはりルルーシュは僕の運命の人、僕の嫁だという事だ。 最愛の嫁ルルーシュと、可愛い義理の妹ナナリーと三人で暮らす幸せな未来がまで見えて来て、スザクは今幸せの只中にいた。 憑き物が落ちたように晴れ晴れとした笑顔のスザクに困惑しながらも「スザクがこちらに来てくれた!やった!流石ナナリーの騎士になる男!俺の親友!最高だ!」と、ルルーシュは感動した。 そして何れ知られるのだからとギアスの事をスザクにあっさりと打ち明けた。 |